■レーシック情報:適性はレーシックの種類によって変わるブログ:2020-01-03
わたくしの家の自慢は「銀木犀」…
高さ、およそ四メートル、
こぶのあるごつごつした太い幹の周りは、
大人が二人がかりでやっと抱えられるほどである。
銀木犀の花びらがほろほろこぼれ落ち、
辺り一面真っ白な雪のように散る様も、また見事!
この銀木犀は、わたくしの親父が植えたもの。
庭に植える植木にあれこれ思案しながら、
親父は銀木犀の木を選んだらしい。
金木犀のような強い香りでなく、
それでいて庭木として価値のある苗木を探し、
自らの手でこの銀木犀を庭の真ん中に植えたという。
今では、堂々とした大木に成長し、真緑の生い茂った葉は、
いつもさわさわと、心地よい葉音を立てている。
親父は、三十六歳という若さでこの世を去った。
青年教師の面影の残る遺影が、今でも座敷の鴨居に微笑む。
小学校の教師をしていた親父は、
運動会の校庭の整備作業中、がけ崩れの事故で亡くなった。
幼かったわたくしの記憶は実に曖昧で、
親父の思い出は皆無に等しい。
親父の面影すら、思い出すことが出来ない。
しかし、事故当日の周りの騒がしい様子や、
事故を聞いた時のお子様ながらに感じた不安な気持ちだけが、
かすかに脳裏をかすめる。
社会人になったわたくしは、
気がつけば親父の歳を遥かに越してしまった。
しかし、不思議なことに
お子様の頃からこの銀木犀が大好きで、
毎年銀木犀を見上げては、その豊かな香りに秋の気配を感じ、
心癒され元気付けられて来た。
祖母は毎年必ず時季になると、
一輪挿しにこの枝を挿し、ささやかな家庭の中で、
移り行く季節を楽しんでいた。
そして、
ただ漠然と、いつも心の隅で、
「これは昔々、お父さんの植えた木なんだなぁ」と
わたくしは記憶にない親父を思ったりしたものだ。